近親相姦の描写を含みます(直接的なものはありません)


あるところに女がひとりおりました。

女はイシュガルドのとある貴族の家で働く侍女でした。女が働く家には兄弟が三人おりました。長男は立派な騎士。次男は敬虔な聖職者。三男は不真面目でしたが頭と口の回る色男で、女は三男にすっかり惚れ込んでおりました。

ある日長男と次男が行方不明になりました。捜索の末見つかったのは長男が愛用していた槍と、それに貫かれた次男の死体。長男の姿はどこにもなく、貴族の家は大いに混乱しました。次男の葬儀は内々に行われ、家の跡継ぎは長男から三男になりました。女はいつも兄達と比較され燻っていた三男にようやく光が当たったのだと喜びました。

三男の両親が相次いで亡くなるとついに三男が家を継ぐことになりました。しかし女に与えられたのは期待していた甘い求婚の言葉ではなく、解雇通知だけでした。住み込みで働いていた女は唐突に家を追い出され、明日の生活にも困る始末です。何かの間違いだと女は三男に訴えようとしますがまるで取り合ってもらえません。

そして数日後、女は三男がどこぞの貴族の娘と婚約したことを知りました。

なんのことはありません。三男にとって女は単なる遊びの相手だったのです。今や家長となった三男にとって必要なのは、自分の地位を盤石にするための貴族の血を引く娘。庶民の出である侍女などものの数にも入っていないのです。ですが女はそんなことは露ほども頭にありません。貴族の娘が三男を誑かし、自分から無理やり奪ったのだと思いました。

そんなときです。女は自分が妊娠していることに気付きました。女は三男以外と通じたことはなく、確実に三男の子供です。女は浮き足立ちます。子供がいると分かれば三男も目を覚まし、自分を妻に迎え入れるでしょう。

女は貴族になりたかったのではありません。ただただ、愛した男に愛されたかったのです。

女は三男に手紙を送りました。自分にはあなたの子供がいる。どうか愛しあった日々を思い出して自分を迎えに来てほしい。そう綴った手紙は三男のもとに届きました。

手紙で指定した場所で待つ女。女のもとに三男が現れました。ですがひとりではありません。三男の傍らに異端審問官と物々しい鎧を纏った神殿騎士の姿があります。驚く女に構わず、三男は言いました。

「あの女が私の両親を殺した異端者です。どうか捕まえてください」

女は必死で逃げました。腹の中の子を守りながら必死に、ただ必死に。

山を越え、森を抜け、ぼろぼろの体でたどり着いたのは黒衣森の小さな集落でした。

集落の人々は女を匿いました。彼らが信じる精霊が女を追い出さなかったのが一番の理由でした。

女は三男の仕打ちに嘆きました。何日も何日も嘆いた末、ひとつの考えに至ります。